楽曲は粒揃い。透き通る歌声と鍵盤が瑞々しいアップテンポ『goes on forever』『生まれたてのブルー』、最後の最後で結局プロデューサーのコーラスが主役に転じてしまう入魂のバラード『彼方まで』など。基本的にはピアノ・キーボード・アコギ等が主導する王道バンドサウンドですが、時折打ち込みを混ぜたりほんのり民族音楽風のスケールをも見せたりと幅は持たせています。 一番の聴き所は、Я・K氏の影の面が出た『激痛』。とことんマゾな世界観を、触れたら脆くも崩れてしまいそうなほどの繊細な声でKOKIAが歌い上げます。
shin作によるミドルテンポのポップなギターロック。当時からファン人気が特に高かった曲だそうで、彼もお蔵入りにするのは忍びないと思ったか、『MY BABY(BLOOD ver.)』としてBLOODの2004年作『DO IT YOURSELF!』に収録。 DVD映像はサビ部分ぐらいですのでリリースver.でどう変えられたのかがあまり判断つきませんが、サビ終わりのドラムアレンジなどが若干異なるように見えます。またBLOODの音源はあまり低音が出てないので、RATS ver.であればもう少しベースが前面に出た仕上がりだったのではと想像します。 サブスクでも聴けます。 MY BABY - BLOOD ver. - song and lyrics by BLOOD | Spotify
X JAPAN解散後のPATA・HEATH、hide with SpreadBeaverのI.N.Aに加え新人ヴォーカリストJO:YAを擁する4人組バンドの1stアルバムです。2001年作。
骨太なロックサウンドをベースに、I.N.Aのマニアックな職人技的打ち込みがより前面に出るスタイル。とはいえロックバンドならではのダイナミズムは大事にしていたようで、デジタル色の強い曲でPATAのギターが曲に生感を与えていたり、意外にもI.N.AがNo synthrsizerな疾走ロックを用意していたりもします。ほとんどの曲に参加しているzilch~Queen of the Stone AgeのJoey Castilloが強力なドラムを叩いているのも大きいですね。 収録曲のなかでは、アニメの主題歌も似合いそうな熱血疾走ロック『GLOW』、HEATHらしいクールなメロを生かしミクスチャー色をも感じさせる『TRUE LIES』…という2大シングルがどちらも素晴らしいです。この時代のJ-ROCKが好きな方には是非探していただきたい! ヴォーカルは良い声ですが、かなりの部分でエフェクトがかかっておりあくまで楽器としての扱いなのが好みを分けそうではあります。歌唱指導としてバイク音の真似をやらされたというエピソードがあるのですが、それゆえちょっとうねりのある歌い方が印象的。
それまでの作品は異様に激しいライヴの割に妙にポップなナンバーも多かったのですが、今作では加入していきなりメインソングライターとなった若きヴォーカリストに引っ張られるかのようにバンドがアルバム全体でハードコア化。 どうも前身バンドBODY時代より新ヴォーカリスト加入時は洗礼のごとくギターとドラムが爆音でヴォーカルの音量が小さい音作りがなされる慣習*1があり(相撲におけるかわいがり?)今作も同様なのですが、この音楽性にはむしろあっています。 『クロイカリスマ』『I Can't Feel』といった短尺ハードコア曲の畳みかけは圧巻で、そのぶん終盤に1曲だけある男臭いアコースティックバラード『I think about you』にもグッときます。パンキッシュながらもポジティブな光に満ちたメロディの『INSIDE OF MIND』も好きです。
『LUNATIC TOKYO 2025-黒服限定GIG-』参加された方はお疲れ様でした。 私は参加していませんが、どんな困難があってもステージに立つその姿勢に勇気づけられますし、一番の懸念事項であったRYUの声にもどうやら奇跡が起きたようで本当によかったです。 しかしドーム公演も含めた今回の『ERA TO ERA』というツアーは終幕前のアルバムの振り返りなのですよね。そこに限定する意味を自分はつかめていないのですが、とにかくREBOOT以降のアルバムを忘れてもらっては困る…ということで、『A WILL』に続き今回は『LUV』をまたも大好きなバンドゆえの辛口含めた感想で書きました。 否定的な意見が苦手な方は回れ右でお願いします。
★INORAN ルックスだけでなくソロの諸作にいい意味で年齢を感じさせない若々しい作品が揃う彼。今作でも彼の楽曲はひとまわり若く感じさせます。 EDMを通過したロックサウンド(ハンドクラップの音色もEDM的)で開放感のあるオープニング『Hold You Down』、煌めきと歪みが共存するインディーロック風のギターサウンドとコーラスが印象的なミドル『Thousand Years』…どちらもバンドに新たな色を加えるものでありながらたしかにLUNA SEAだと感じさせる意欲作です。 クラブサウンドにドラムが弾ける初のインスト『Ride the Beat, Ride the Dream』は真矢の声がサンプリングされていたり急なピアノブレイクが面白い。まあこれに関してはわざわざ音源にしてバンドのアルバムに入れるべき曲かと言われるといまいちですが…。
★SUGIZO 彼は新機軸と王道をおさえています。 まずは『Lost world』の発展系のようなファンクギターが冴え渡るディスコパンク『BLACK AND BLUE』がバンドの全ディスコグラフィーの中でも上位に入る出色の出来でしょう。これぞSUGIZO流の2017年最新型LUNA SEAと言える仕上がりです。 このバンドならではの壮大なスケールを描くドラマティックなスローナンバー『闇火』も素晴らしい!。ただしライブで披露される際の圧倒的な説得力・絶唱と比較してしまうと音源は物足りないかな…。 一方もうひとつの新機軸『誓い文』に関しては、「60年代モータウン的 x 大瀧詠一的 x グラムロック」*2…という狙いはわかるものの、歌メロがJ-POPすぎるのと異様に明るい歌詞に若さではなくむしろ老いを感じてしまいました。似たようなイメージの曲として『SHINE』がありますが、あちらはポップでありながらもしっかりオルタナロックバンドとしての熱が詰まっている(大好き!!)のに対し、こっちはあくまでSUGIZO一人の演奏が見事なポップ曲でしかないような気がするんですよね。特に下手二人の存在感のなさ…。ただ、これがリードトラック候補だったというのはだいぶ狂った発想でそのパンクな姿勢は好きです 笑。 疾走する表題曲はギターリフ&ドラムフレーズが印象的ですがThe FLAREの使いまわし。さすがのカッコよさですが新鮮さがなかったのは残念でした。たしかにフレアはSUGIZO氏にとってアーティストとしての充実期でありながらセールス的には最も不遇な時代の活動でしたのでもう一度蘇らせたいのでしょうが、ソロや課外活動を含めてネチネチ聴き込んでいるリスナーを忘れてもらっては困ります。
★RYUICHI 今回のトピックとも言えるでしょうか、RYU氏も2曲を手掛けています。いまだに河村隆一ガー…等々言って96年で止まっているリスナーも少なくない一方で、実は何気に彼がいちばん「LUNA SEAらしい」曲を書いており、リブートLUNA SEAを心から楽しんでいるとわかります。 SUGIZOが全面的にアレンジを手掛けた陰りあるミドルポップ『pieces of a broken heart』は例のヴァイオリンあり"あの"ロングトーンのギターソロありと「ザ·SUGIZOっぽい曲」です。ただしファンとしてはたまらない美味しさではあるものの手癖で塗り固められた感も否めず、またしても下手二人は何を…?という疑問も浮かびます。 『So Sad』は透明感のあるアルペジオが響きわたり後半シューゲイズに移行するミドルで、どっちかというと「LUNA SEAのカップリング」感のある曲ではあります。歌メロ…特にサビはメロディーだけ切り取るとどこか昭和のフォーク歌謡みも感じられ、そこがRYUICHIテイストでしょうか。
★J J氏に関してはかなり不調の様子。 まず良かったのはシングル『Limit』。復活直後のシングル群に見られた歌詞とメロディーの噛み合わせの悪さが改善された、Jサイドのシングル曲として新たな名刺代わりと言えそうな疾走曲です。間奏での情報量の多いギター·リズムアレンジやキーの高いサビもカッコいい! しかし残り2曲はどちらも疑問の残るもので…。 エモ·ポップパンクのようなサビはカッコいいものの5分で書き上げたかのような詞の手抜きぶりに衝撃が走る『Brand New Days』に加え、タイトルに黒夢感のある『Miss Moonlight』に至ってはインタビューにて「何の変哲もないけどストーン!と胸の中に落ちてくるような曲。」とのことでしたがフックがなく変哲がないにも程があります…。リフもJのデモをそのまま弾きましたという感じ。悪い曲ではないですが、これは「LUNA SEAのカップリング」ではなく所謂世間におけるカップリング曲のような弱さです。 この時期はライヴパフォーマンスもちょっと弱めに感じましたのでもしかしたら見えないところで色々大変だったのかもしれません。何事もなくてよかった…。
ということで意欲的な楽曲も含むため前作より好きなのですが、それでも過去の彼らが残した作品を思えばとても傑作とはいいがたいという感想になってしまいます。キーが高いことも加わって案の定前作同様定番メニュー化した楽曲は少ないです。メンバーも前作以上に内心思うところがあったのかもしれません。個人的には『Brand New Days』を『Dejavu』とかと入れ替わりで毎度ガンガン演ってくれても良いのですが…笑。新曲をしっかり押し出す方がカッコ良いと思うんですけどね。逆に『BLACK AND BLUE』が18年クリスマスの『LUNATIC X'MAS「SEARCH FOR MY EDEN」』という過去再現コンセプトのアンコールで披露されたのは嬉しかったです。