スピード感(仮)

自分の好きな音楽、中古屋で収穫したCD等についてつらつら語ります

cali≠gari『12』レビュー

 

12(良心盤)

12(良心盤)

 

 

武井誠脱退により石井秀仁・桜井青・村井研次郎の3人編成になったcali≠gariの3年ぶりの新作。
ドラムに上領亘・Tetsu(D'ERLANGER)・中西祐二(ex.バロック)・SATOち(MUCC)を迎えています。特典曲『トゥナイトゥナイヤヤヤ』が完全に別物にリアレンジされ収録された以外、配布曲・シングル『春の日』収録曲といったこの3年間で発表された楽曲は一切収録されていません。

今作からは老舗である日本コロムビアに移籍し、ジャケットもキャラクターのコロちゃんを起用。シールや帯裏からもコロちゃん愛を感じました。
CDの盤面も往年のコロムビア作品を意識しているのでしょう。

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さて前作『11』は好きな曲はあれど正直あんまり聴いていない作品で。良曲揃いですがシングル以外地味目だなぁという感想でした。
しかし今回は大傑作ではないでしょうか。

1曲目の初っ端から「死ねばいいのに×2 あんたの顔を見るのが不愉快」という歌詞で始まるのですが、トータルで見るとむしろいつも以上にキャッチーさが際立つ作品だと思いました。
石井曲でいえば、『脳核テロル』はBPM256で1分55秒を駆け抜けるハードコアながらクリーントーンギターをバックにしたメロディアスなサビが用意されていますし、カオティックに始まる『とある仮想と』も後半はドリーミーなシンセ+アコギに柔らかなメロディーが乗っかるポップなパートへと展開します。
サックスが加わりヤンキーな当て字が咲き乱れるビートパンク『紅麗死異愛羅武勇』や完全打ち込みの短尺EBM『バンバンバン』に関してもネタ的・勢い重視なようで、桜井によるコーラスのキャッチーさがしっかり耳に残る。
シングル・リード曲なしで発表された本作ですが、敢えてそれっぽい1曲を選ぶとすれば『颯爽たる未来圏』でしょうか。疾走感があり特にBメロに哀愁のあるメロディアスチューンで、こう文字にすると普通なのですが、各要素が個性的なので実際に聴くとベタさは一切感じない楽曲で。あとこの曲ではTetsuがドラムを担当しており、イントロのドラムや手数の多さから氏がかつて組んでいたCRAZEっぽさを感じました。

個人的にこのバンドでは石井の楽曲の方を好んでいるのですが、本作では桜井楽曲も大いにツボりました。復活以降ちょいちょい見せるようになった80's志向がかなり前面に出ています。
キラキラしたシンセが印象的な『ギムレットには早すぎる』はリズム隊が派手な以外はまんま80's後半~V系黎明期のビートロック(崎谷健次郎を手掛けていた頃の秋元康をイメージしたという詞も最高)ですし、『あの人はもう来ない』もバブル期のドラマのEDにも似合いそうな切ないアーバンポップでギターやピアノのフレーズ・音色が完全にあのころの感じ。
そしてスラップベースが映えるキラキラしたディスコ『セックスと嘘』は傑作でしょう。何度もリフレインする「友愛を代償に云う~」というコーラスが耳に残ります。
全体的には今作も復活作『10』以降の流れである80's・NWといった彼らのルーツを意識したような方向性ではありますが、シャッフル系のリズムの『さよならだけが人生さ』に関しては活動休止以前の名曲『グッド・バイ』を彷彿とさせるものがありますね。