スピード感(仮)

自分の好きな音楽、中古屋で収穫したCD等についてつらつら語ります

9GOATS BLACK OUT『Archeives』レビュー

 

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 D'elsquel、GULLETなどのキャリアを持つヴォーカリストryo(漾)を中心とする3人組の解散に伴うベストアルバム。

評価の高かったGULLETがあっという間に解散しそれに伴いryoもシーンから姿を消したことから、彼は名古屋のヴィジュアル系シーンで伝説扱いされていました。それだけにこのバンドによるryoのカムバックがシーンに与えた衝撃度はかなりのものだったと記憶しています。

全シングル曲(アルバム初収録)と各アルバムの良いとこ取りな選曲に、再録と新曲を加えた今作。結果的にミドル・スローテンポの歌モノが多くを占めています。自分たちでもそこが武器だという自覚があるのでしょう。逆にアルバムのバランスとしてはちょっとアレなんですが、まぁそこは1曲1曲の力が強いので。

妖しく色気のあるヴォーカル(ファルセットが絶品)+オルタナ・ポストロックを通過したギター・ベースにピアノやエレクトロニクスを散りばめた透明感のあるサウンド+憂いあるメロディー、というのが彼らの楽曲の根本です。ジャケットが冬の青いオーロラをテーマにした神秘的なものなのですが、聴いていて浮かぶのはまさにこのイメージ。
一方『690min』『headache』のようなアッパーな楽曲ではデス声・グロウル・ウィスパーを織り交ぜた多彩なヴォーカリゼーションやラウドなサウンドも聞かせます。
弦楽器隊は音色やフレーズのセンスで主張するタイプなのか豪快なソロなどはないのですが、そのぶん歌の存在感がより際立っています。

収録曲をピックアップすると…。
前述した彼らの楽曲の根本にのっとった、1曲目にしてバンドの音楽性をわかりやすく示すミドル曲『Sink』。
ほとんど歌謡曲な哀愁メロディーをピアノが彩るバラード『Den lille Havfrue』。
静と動が交錯するプログレッシブな展開に痺れる『甘美な死骸』。
優しくのびやかな歌声が印象的で浮遊感に満ちたスローバラード『願い』『Panta rhei』。
収録曲中唯一メジャー感があり、16曲目にして春が訪れたかのようにポップな『8秒』。
新曲『Nuit Blanche de L'aurore』は寂しさと晴れやかさが入り混じる、なんだかエンドロールのような立ち位置。

ヘドバンや変な振付とかそういう楽しみ方ではなく、歌・世界観に浸りたいという人向けです。
シーンのトレンドに真っ向から対峙するかのようなスタイルだったこともあり必要以上にマニアック扱い&神格化されているきらいがありますが、特に小難しいことをやっているわけではなくメロディーにはベタさすらあるので是非気軽に手に取ってほしいなと。
解散後ギタリストのUTAは現在sukekiyoで活躍中ですが、曲調に共通項もありますしそこから遡るのもどうでしょう。ちなみに京が彼をプロジェクトに誘ったのは「9GOATS~を気に入ったから」だそうです。 
また90年代中期のヴィジュアル系を好むリスナーにも聴いてほしいですね。
LUNA SEAで言えば『Claustrophobia』『FALL OUT』『gravity』『VIRGIN MARY』あたり、黒夢でいえば『百合の花束』『Romancia』、あとは雪乃期のKneuklid Romanceとかその辺が好きであれば、ピンとくるのではないでしょうか。←この例えがマニアックと言われるかもですが


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